健康寿命を伸ばす!”終のすみか”を建てる時に注意すべき2つのポイント
2020/06/16家づくりノウハウ 村木建築工房の家づくり

和のしつらえを得意とする村木建築工房には、シニア層の老後の住まい…いわゆる”終のすみか”のご相談も多く寄せられます。子育てが終わり、家族が夫婦ふたりだけになった時、明らかに2階建ての家は広すぎ、そして古すぎます。部屋数が多く掃除が大変になり、階段の上り下りも歳を重ねるにつれて億劫になるはずです。
終のすみかのことを考える前に、まずあなたが”老後をどう過ごしたいか”考えてみましょう。できれば子供達に迷惑をかけずに暮らしたい、老夫婦だけで自活できるようにしたい…と考えていらっしゃる方は多いでしょう。
「老いても自活できる住まい」が終のすみかだとすれば、建てる時に注意すべき重要なポイントがあります。それは「健康寿命を寿命と同じくらいまで伸ばす」ことが共通の考え方になっています。
寝たきりや介護状態になったりせずに日常生活を送れる期間を表す「健康寿命」…2016年の調べで日本人の平均健康寿命は男性72.14歳、女性74.79歳という統計が出ています。一方、平均寿命は男性80.98年、女性87.14年です。どれだけ長い年月を寝たきりや介護付きで過ごすのかがわかるとゾッとしますね。
そんな健康寿命ですが、家の作り方と浅からず関わっていることをご存知ですか?

1)家中が夏涼しく冬暖かい”一定の室温”
実は「室温を改善」することで健康寿命を延ばすことができるかもしれないのです。室温は住人の健康にもっとも作用する要素です。熱中症リスクや、浴室の冷気と浴槽の湯の熱さで脳に衝撃を与える”ヒートショック”など直接的なものだけではなく、室温によってはじわじわと体を蝕んでいくような悪影響もあります。
イギリスの保健省の過去の報告書(2015年改定)によれば、最低推奨室温は「18℃」。
・18℃以下で”循環器系疾患”や”血圧上昇”
・16℃以下で”呼吸器系疾患に対する抵抗力の低下”
以上のように定義されているのです。
逆に言えば、室温を均一に高く保てば、健康を害する影響を受けにくいということでもあります。室温を保つには断熱・気密性能を高めて、室温が外気の影響を受けにくくすることが大切です。”魔法瓶”のように中の温度を保つことに優れた住まいを建てるべきです。
2)適切・適度な”バリアフリー”
必要となるバリアフリー施工は、住む方の年齢やご希望にもよるので、ケースバイケースになります。よくあるものとしては、浴室には滑り止めの床に手すり、段差をスロープにする、平屋にする、玄関に手すりを設けるなどさまざまな手立てがあります。
また、”絶対に車椅子の世話になんかならない!”と確実に言える方はいないでしょうから、余裕があるのならば、廊下や入り口は通常よりも広いスペースを取ることも良い選択です。
しかし、もっとも気をつけるべきなのは「小さな段差を作らない」ということです。小さな段差は見誤ってしまう可能性が高く、1-2cmの小さな段差が逆につまづき・転倒の元になってしまいます。そこで骨折などして動けない期間が長くなれば大変です。
動けない期間で”筋力が低下”することで、そのまま寝たきりになってしまう危険性もないとはいいきれません。一般に、絶対安静の状態が1週間続けば、筋力の10-15%が失われてしまうと言われています。過度な安静によって体にさまざまな悪影響を引き起こすのが「廃用症候群」です(参照:公益財団法人長寿科学振興財団[健康長寿ネット])。
この廃用症候群は直すことが非常に困難だと言われていますので、「予防」するしかありません。年齢や体の状態を踏まえて、適切なバリアフリー設備を整える、ということも大切な予防ポイント・健康寿命を伸ばす秘訣になるでしょう。